その6実で遊ぶ
1ムクロジ
この名前を知らなくても、実で遊んだ記憶のある方はいらっしゃるはずです。お正月の羽根つきの羽根についているおもりがこの実です。
農耕民族の日本人はこの羽根をトンボに見立て、今年もたくさんのトンボに田圃の害虫(農家から見て)を食べてもらうために飛ばしたといわれています。また漢字で、無患子と書き、疾患がない子と捉えられて、元気な子を育てる意味でも羽根つきで使われたとも。園庭に1本ほしい樹です。
実を包んでいる皮の中にはサポニンが含まれているので、シャボン遊びができます。その他、エゴノキの実、セイタカアワダチソウの花、エンジュの果皮などでもシャボン遊びや汚れた靴下などが洗えます。いろいろ遊んで試してみると、おもしろい発見があると思います。
2ナンキンハゼ
この樹は街路樹としても植えてあります。秋になると実がはじけて白い種が飛び出します。ムクドリやヒヨドリ、キジバトなどが食べにくることもありますが、この実はロウソクのロウになります。実をすり鉢ですりつぶし、種を除いて白い粉を集めます。その粉をガーゼで包み、一度蒸します。それをぎゅっと絞って汁を取り出し、型に流してタコ糸などを入れるとロウソクができあがります。城下町などではハゼの木がたくさん植えられていました。
ハゼの木はかぶれることがあるのであまりおすすめできませんが、この樹は紅葉もきれいなので、園庭にも植えてほしいです。
3タラヨウ
この樹は郵便局の木として定められ、大きな郵便局には植えてあります。私は授業でこの葉を使います。葉を1枚ずつ学生に渡し、裏に何かとがったものを使って書いて、書いたほうを裏にして置いてもらいます。数分後に再び裏返すと書いた文字が浮き出て、歓声が上がります。そこで、「何に書いた?」と質問します。「葉っぱに書いた」「ということは?」「?」「縮めていうと」「はかいた」「はがきや」「そう、はがきです」「もちろん郵送できますが、定形外なので…」「えーっ」という会話を楽しんでいます。春より冬のほうがきれいに出ると思います。
4フジ
この樹は、砂場の近くに植えて、日よけにしているところが多いと思います。花はマメ科なので、クマバチがよく来ます。羽音が気になりますが、攻撃性はそれほどないので刺されることはほとんどありません。このハチのおかげで、秋にはたくさんの実が付きます。
この実は冬にはじけるのですが、その前に収穫して中の種を取ると、黒い豆が入っています。おはじきの原型です。実は炒って食べられますが、食べすぎると下痢を起こすことがあるので、注意してください。
5コブシ
この樹は春一番に咲く、春を告げる花としても有名です。よく似た樹にモクレン、シデコブシ、タムシバなどがあります。この樹の花の由来は、実を見ればイメージできます。手を握り、じゃんけんの「グー」の形の拳が由来です。おもしろいのは、秋から冬にかけて、実の中に赤く熟した種が出ると、落ちずに紐のようなものでぶら下がります。それを冬鳥が食べに来ます。鳥は赤い色が見えて、揺れるものに惹かれるのです。やがて実は遠くに運ばれ、糞に混ざり落とされます。自分の命を遠くに飛ばす、動けない樹の戦略なのです。その他、冬場に赤い実をつけて鳥に種を運んでもらう樹には、アメリカハナミズキ、アオキ、ヤマボウシ、ナンテン、ノバラ、モチノキ、サンゴジュなどがあります。
6ドングリ
ドングリという名前の植物はありません。クヌギ、コナラ、アベマキ等の落葉樹、アラカシ、シラカシ、マテバシイ、シイ、ツブラシイ、シリブカガシ等の常緑樹など、ドングリはたくさんあります。大きさ、形が違うので、遊び方も様々です。食用はシイ類ですが、一番美味しいのはシリブカガシ。拾って服などで磨くと、光沢がとてもきれいです。
クヌギ、コナラは甲虫がやって来ることもあります。落葉樹のドングリは日の当たるところに生えるパイオニア的樹種の一つです。拾って遊んだ後、残ったものを水に漬けます。浮いたものは除き、沈んだものの中にもチョッキリの幼虫がいることがあるので数日沈めておきます。その実を取り出し、ポットで育てると2~3年で苗ができて、園庭に植えて5年もたてば、たくさんのドングリが取れます。