その1土壌生物
1「生きて動いているものに触れる」こと
ダンゴムシ、ハサミムシ、ワラジムシは、専門的にいうと動物界節足動物門の仲間になります。海岸にいるフナムシや、生きた化石といわれるダイオウグソクムシも同じ仲間です。「風の谷のナウシカ」に出てくる王蟲(おーむ)は違います。たぶん?
子どもたちが大好きなダンゴムシは、動きがそれほど速くないので、2歳児くらいでも平気で捕まえることができます。ただ、指先で捕まえる時に力の加減がそれほどできない場合はつぶしてしまうこともあります。この時気をつけたいのは、叱らないことです。叱ってしまうと、叱られることで「虫嫌い」になるかもしれないからです。子どもは元々虫が苦手ではありません。大人の対応によって、「虫嫌い」「虫好き」になるのだと思います。
身近な生きものに触れて育つ力は、今の時代とても重要です。「生きて動いているものに触れる」ことは、バーチャルでない、子ども時代でしかできない体験なのです。
2ダンゴムシ
園庭の植木鉢やプランター、石の下や落ち葉の中に潜んでいるダンゴムシは、落ち葉を食べて土に返してくれる、生態系では土壌生物の分解者になります。随分前から日本にいたので在来生物と思いがちですが、帰化種といわれ、明治末期~大正初期に確認されています。今では、どこにでもいる生きものです。
飼育方法は、それほど難しくはありません。飼育ケースに土を入れて、食料となる落ち葉を入れます。どちらかというと集団で暮らしているので、10匹ぐらいは入れて、土が乾燥しないように時々霧吹きをしましょう。
生きているのでうんこもします。これがまたおもしろい形をしているので観察してみてください。大きくなるには脱皮を繰り返します。また、子どもは雌の
3ハサミムシ
お尻に大きなハサミを持っているのは雄で、勇敢な戦いをします。ハサミがあるので毒があるように思われがちですが、無毒です。もちろん挟まれて痛い思いをすることもありますが、これは自分の身を守ろうとしている、小さな生きものの小さな抵抗なのです。
子どもたちが捕まえる時には留意する必要があるかもしれませんが、それを敢えて子どもたちに伝える必要はないかと思います。自分で経験して初めてわかることを、大人が自慢げに、あたかも指導者のような対応をすることはおすすめしません。もちろん、命にかかわる場合は別です。小さな経験が、発見や興味につながることもあると考えます。
ハサミムシの子育てはすばらしく、基本は雌が卵を温めるのですが、卵が汚れたりすると舐めて綺麗にしたり、敵が来たら当然立ち向かい、卵が
4ワラジムシ
ダンゴムシとよく似ているので間違えますが、ワラジムシは丸くなれません。平べったい形のままです。見かけることが少ない生きものですが、ダンゴムシと同じようなところで生活していて、どちかというと屋内で見かけることも多いです。これもヨーロッパ原産の帰化種といわれていて、ダンゴムシより早く江戸末期~明治初期にかけて日本に入ってきたようです。
丸くならないので、ダンゴムシと一緒に飼育するとその違いを見ることができて、子どもの小さな発見につながると思います。
5ヤスデ、ムカデ、ゲジ
この3種の生きものもよく似ているので間違えますが、ヤスデは無害です。ムカデも噛むこともありますが、攻撃ではなく自分の身を守るための一つの手段です。
ムカデは広い場所に出ると不安になるのか、すぐに逃げ出します。たくさんの足を使って器用に歩きます。それを追いかけて踏みつぶす人がいますが、逃げていく生きものを追いかけてまで殺すというのはどうなのでしょうか。私は、見かけると園庭の端や落ち葉の中に逃がしてあげます。写真のムカデは卵を抱いています。自分の子孫を残そうとしている生きものを追いかけてまで殺すことは、私にはできません。
ゲジもよく似ていますが、無害です。「ゲジゲジ眉毛」という言葉は、このゲジが由来だといわれています。
6子どもと対話すること
これらの生きものは、目立つ生きものではありません。どちらかというと嫌われ者かもしれません。でも、保育をしていくうえで忘れてはいけないのは、今、すべての生きものが生きているということは、何かの役に立っているということです。地球が誕生して46億年です。コンピュターは部品を集めると作ることができますが、これらの生きものは46億年かけてできたということです。
子どもたちに、このことを伝える必要はありません。保育士がそのことを知り、子どもと対話することが大事なことと考えています。