その4草花遊び

多様な環境の日本

 草花は、山と里の境目にたくさん生きています。街中も同じで、手入れされた街路樹の根元には多様な草花が生きています。空き地をそのままにしておくと、すぐに草花が生えてきます。これは日本が多様な季節を持ち、多様な植物が存在できる環境にある証拠です。その多様な草花で遊ぶことは、地域、場所に関係なく展開されてきました。年長の者が年少の者に、大人が子どもたちに伝えていた伝承遊びなので「草花遊び図鑑」などはなかったはずですが、近年は出版されています。その要因の一つに、遊びが多様化したことがあげられます(多様化は大事だが、削除されたものがあるということ)。そして、子どもたちが外で遊べなくなったのも大きな要因だと思います。自然がなくなったのではなく、自然から離されたのです(人的災害はもってのほか)。そして、伝える大人がいなくなったこと。今の子どもたちには、かかわり方次第で多様に変化する、五感を使って季節を感じ、命に触れる、そのような自然が必要です。
 雑草と呼ばれる草花は強い印象がありますが、早く花を咲かせて種を作り、やがて枯れてしまう生きものです。季節によって大きく変化するので、草花遊びは季節を感じる遊びでもあるのです。大人になり、ふと街中でシロツメクサを見た時にその遊びを思い出し、季節を感じる、そのことが大事なことだと思います。春から夏にかけては草花の宝庫です。散歩に行く時、道草を子どもたちと思いきり楽しんでほしいと思います。

1タンポポ

 茎は中空ですから先をつまんで吹けば音が鳴ります。金管楽器のリードのようなものです。タンポポの茎は白い汁が出ます。草花の白い汁は毒が多いのですが、タンポポは問題ありません。葉もきれいに洗ってサラダで食べられます。種は綿帽子になり、吹けば飛ばせます。園に持ち帰って園庭で種を飛ばせば、やがてタンポポが生えてくれます。

2シロツメクサ・ゲンゲ(レンゲ)

 花を首飾りや指輪にしたりして遊びます。市販されている種を園庭に蒔くと、絨毯のようになります。

3オシロイバナ

 この花は夜に咲くので、朝早くか夕方にならないと遊べません。それは、子どもが時間ということを考えるきっかけにもなります。実をつぶして白い粉を顔に塗ります。ただ、実には毒があり、誤飲すると嘔吐、下痢などが起こることもあります。

4ナズナ

 ペンペン草ともいいます。実がはずれてしまわないように皮を少しずつ剥いで、数本作って振ると、パラパラと音がします。これをペンペンという音に置き換えたと思っている方も多いと思いますが、そうではありません。この実が三味線のばちに似ていて、ペンペンと弾くのが由来です。同じ仲間にグンバイナズナがありますが、これは葉っぱが相撲の行司の軍配に似ているからです。

5イラクサ・クズ

 葉が大きいので、握りこぶしの上にのせてパンッと叩くと大きな音がします。イラクサにはアカタテハの幼虫が、クズにはキチョウの幼虫が付きます。クズの根は片栗粉になります。

6カラスノエンドウ

 5月の初めに実を膨らませ、やがて枯れてしまう、その2週間ほどでしか遊べません。膨らんだ実から種を取り出し、片方をちぎって吹きます。「ピーピー笛」と人気です。うまく吹けないと工夫しながら遊びます。この失敗と工夫が大事なことだと思います。失敗が許されない状況にいる子も少なくないからです。カラスノエンドウの近縁の仲間、スズメノエンドウとカスマグサなどがあります。なぜそんな名前がついたのか、調べるとおもしろいことがわかります。

7カタバミ

 クローバーとよく間違えられますが、これは在来の植物です。葉で10円玉を磨くとピカピカになります(別名にゼニミガキがある)。葉にはシュウ酸が含まれているのできれいになるのです。戦時中はこの葉を食べた方もいますが、食べすぎると結石ができます。ヤマトシジミ(蝶)の食草でもあります。

小泉造園代表/京都女子大学非常勤講師 小泉昭男