青年会議

活動報告

Report

2024.11.05

第1回全私保連青年会議・日本保育協会青年部合同研修会 in 金沢

 2024年、元旦。希望に満ち溢れた1日であるべき新しい年の始まりに、石川県能登地方を襲った大規模地震。この突然の災害によって、多くの方々がかけがえのない生活や大切なものを失い、日本中は悲しみに包まれました。能登半島という地形や建築資材の高騰、人手不足など、さまざまな要因が絡み、復興に向けた道のりはまだまだ長く、険しいものとなっています。
 少しでも、被災された方々の力になれないか。そんな思いが、私たち全私保連青年会議の中にもありました。そして、考えもまとまらないまま、日本保育協会・新保雄希青年部長に連絡をしました。じつは震災が起こるずっと前から、「来年度になったら、二団体合同で研修会を開催しましょう」という話が上がっており、開催場所は新保部長の地元、石川県ということで計画を進めていました。その研修を、チャリティー研修として開催したいという提案は、日保協青年部の皆様も喜んで受け入れてくれ、また、初めての試みにもかかわらず、全私保連も賛成、応援していただきました。そして7月29日に、全私保連青年会議と日保協青年部との初めての合同研修会が金沢市で開催することが決定しました。テーマは「はじまりは石川から─がんばろう能登」。この研修の収益は必要経費を除いて、すべて『オールこども石川』に寄付することになりました。

 通常の研修とは異なる形にはなりましたが、内容はしっかりと学びのあるものにしなければならない、同時にチャリティー研修として、できるだけ多くの寄付を被災地に届けたい。そんな私たちの願いに共感し、二つ返事で講師を引き受けてくださったのは保育システム研究所所長の吉田正幸氏と、接客向上委員会&Peace 代表の石坂秀己氏でした。お二方とも大変お忙しい中、謝礼も受け取ることなく、金沢市アートホールまで講演に来てくださいました。
 当日、会場にはおよそ 150 名の参加者が集まってくださいました。所属する団体は違いますが、これからの保育をより良いものにするために、そして被災地の力になるために集まってくださった方々の熱気が、ホールいっぱいに広がっていました。
 開会式、まず全私保連の川下会長から、今回の企画に対しての、そして集まってくださった参加者への謝意が述べられました。さらに、第2回以降もこのような合同研修が開かれることを期待しているとのお言葉もいただき、身の引き締まる思いでした。また、全国私立保育連盟・日本保育協会・全国保育協議会の三団体で行った直近の予算要望の中でも、この震災復興に対して触れた旨が伝えられました。続いて、日保協石川県支部・櫻井定宗支部長から は、七尾市の惨状や、発災が正月であったがための苦労が話されました。復旧作業も未だ進行中で、復興に向けてはまだまだ程遠いながらも、地元の方々の頑張りや全国各地からの支援で、少しずつ、確実に前に進めていることへの感謝が示されました。

 「講演1・問われる保育の質と役割─保育界に起きている地殻変動」を担当してくださったのは、吉田正幸氏。さまざまな少子化対策を講じてきてはいるものの、少子化はさらに加速している現状や、10年、20年後の苦しい予測を国全体の問題として提起してくださいました。そして、そういった社会になっていく中での保育の役割や、貢献できる場所について、厳しくも可能性を感じることのできる未来を語ってくださいました。また、今まさに保育界で話題となっている「こども誰でも通園制度」についても、詳しい解説をいただきました。今年度と来年度が保育界にとって大きな転換期になることを改めて実感し、それに備えるために必要な情報を得ることのできた、大変学びのある講演でした。
 講演2は、全国私立保育研究大会の分科会などでも全私保連青年会議として度々お世話になっている、石坂秀己氏が担当してくださいました。氏自身がディズニーランドで長年働いて得た経験や学びから、良いとされる職場の条件や人材育成を考えるにあたり絶対に外してはいけないことなどを、具体例を交えながら、管理者から現場の保育士まで届くように、そして皆が納得できるように説明をしてくださいました。すぐにでも現場で活用できるエッセンスがふんだんに含まれた石坂氏の講義は、何度聞いても新鮮で、聞くたびにもっと職場の質は高められるという希望をもらえます。園の目標をシンプルにし、どの階層の職員であっても判断に迷わないようにすることは、今までもこれからも、変わらず大切にしていかなければと改めて感じました。
 閉会式では、新保青年部長から、あらためて石川県の現状や、発災直後に『オールこども石川』を立ち上げた経緯が伝えられました。そして、それを支えてくれた仲間への感謝が述べられると、会場は大きな拍手に包まれました。
 会終了後は、場所を移動し情報交換会が開かれました。定員一杯、約100名が集まり、各々の保育や地域の課題、研修のあり方などについて語り合っている様子が印象的でした。そこに団体の違いなどは微塵も感じられませんでした。また、会の途中では日保協・日吉輝幸元青年部長(石川県穴水町)から、今回の合同研修に対してのお褒めの言葉や、今後の活動へのエールをいただきました。本当にありがたいお話で、涙している方もいたほどでした。
 今回、このような研修を企画させていただき、無事に終えることができたのも、被災地に思いを馳せて、私たちの声に賛同してくださった皆様のおかげです。この震災を忘れることは難しいかもしれません。しかし、乗り越えることは、きっとできると信じています。今回集まってくださった方々以外にも日本中に仲間がいます。私たち青年会議にもできることがあれば、今後も協力させていただきたいと思います。保育を通じて、明るい未来をつくっていけるよう、今後も頑張って参ります。
「NOTO,NOT ALONE 能登は、ひとりじゃない」
(伊藤 悟/全私保連青年会議会長)


 新保雄希・ 日保協青年部部長


 吉田正幸・ 保育システム研究所所長


 石坂秀己・接客向上委員会&Peace 代表


 伊藤 悟・全私保連青年会議会長