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平成18年4月10日
社団法人 全国私立保育園連盟 保育制度検討会
保育所と幼稚園の一体的な運営をめざした「総合施設」について、これまで厚生労働省と文部科学省の合同で検討がなされ、平成16年12月の「審議のまとめ」では、子どもの最善の利益を守り、子どもの視点に立つ見地から、総合施設のあり方が論じられました。この間、日本の保育、幼児教育のあり方について熱心な意見交換等が行われたことを含めて、先ずは関係者の方々のご苦労に敬意を表します。
しかしながら、今回の「認定こども園」に関する法律要綱案ならびに法律案は、「子どもの視点」を守る立場から、現実の制度を「どのようにつなぎ合わせるか」ということに重点がシフトされ、当初構想された理想像からは大きな隔たりを感じざるを得ません。
子どもの視点が希薄になっていることについては、制度的な課題と保育内容にかかわる課題の二つの側面からうかがえます。認定こども園の具体的な実施に向けては、何より子どもの視点を優先する立場からとくに次の事項が最重要課題であると考えます。国ならびに都道府県レベルで以下の点が考慮され、とくに認定基準の基礎となるガイドラインの策定に向けては、将来の日本の保育・幼児教育全体のレベルがより一層向上することにつながるものとなるよう十分に対応されることを望む次第です。
1.(第1類型を原則にした実施について)
認定こども園には、4つの類型が想定されています。そのうち第2類型である幼稚園の保育機能拡大型や第3類型、保育所の幼稚園機能拡大型は「認可外施設」を付加するものであり、既存の認可施設より低水準のものになることは必至です。さらに「地方裁量型」施設は、認可外施設同士の「一体化施設」であり、結果的に認可外の低水準の施設を地方独自でつくることを容認し、同時に、国がそれを認知し、促進する仕組みにもなり得ます。就学前の子どもたちの保育・教育施設の中に、子どもの「最善の利益」が担保されていない施設が誕生することになり、子どもにとって望ましい環境をつくるという、当初の理念からほど遠いものになってしまいます。認定こども園の具体化にあたっては第1類型を原則に実施されるよう求めます。
2.(第1類型を原則にした公立施設における実施について)
また認定こども園では、地方自治体の抱える公立保育所と公立幼稚園を一体化施設に転換させることを容易にしています。このことは、財政効率化の視点から容認できるところではありますが、こうした場合も幼稚園、保育所ともに最低基準や設置規準などを遵守した第1類型の認可施設であることを前提とすべきです。
3.(最善の利益を守る原則に立った乳幼児のための環境設定について)
認定こども園は、実質上、これまで私立幼稚園で行われてきた預かり保育を認定し移行を促す仕組みでもあります。それは預かり保育の保育形態や保育内容を子どもの視点から点検するのではなく、無原則に容認することにつながります。 幼稚園の空き教室の活用という点からは有効であるかもしれませんが、保育所において維持されてきた最低基準を満たしていない空間を、待機児対策として利用することが「子どもの視点」を大切にした施策なのでしょうか。都道府県等による認定こども園の基準の策定にあたっては、あくまで乳幼児にとっての環境設定や人的配置、生活リズムなどにおける最善の利益を守る原則に立った内容とすること、及び国がそのガイドラインを施行令、施行規則等で明確に示すことを求めます。
4.(一貫した育ちを捉える視点と、子どもの生活時間の連続性の確保について)
認定要件は、3歳以上の子どもについて保育に欠けるまた欠けない子どもを受け入れることと子育て支援機能を持つこととなっており、0歳から2歳児の保育に欠ける子どもの保育はオプションとなりました。このことは一方で就労世帯の増加や次世代育成支援、少子化対策の推進の中でより一層保育所の役割の重要性と固有性を明確化することになり、これまで乳児保育の実績のない幼稚園型の施設等では現行の3歳以上児の預かり保育を単に横滑りさせるものとなることが予想されます。結果としてこうした幼稚園型は3歳以上の専用施設となり、0歳から2歳児は従来の保育所あるいは保育所型のみとなり、年齢で分断された幼保の体系を促進することになることが危惧されます。 私たちは幼児期の発達の節目ともなる2歳から3歳児の自我発達と自己抑制などの課題に丁寧に対応していくことのできる認定こども園であるべきと考えます。 同時に幼稚園に続いて認定こども園が幼保連携型、幼稚園型を中心に学校教育法に基づいた学校教育施設として位置づけられることは、結局これまで「保育」と「幼児教育」とを併記し概念の整理を避けてきた保育所との縦割りの弊害を一層強化することになります。 また、子どもの1日の生活リズムを大切に配慮することとした一方で、現行の預かり保育をそのまま受け入れたような4時間の共通時間(コアタイム)の設定は、生活時間を分断する点から課題を大きく残しています。あくまで個々の子どもの1日の生活時間をベースに保育者が対応したカリキュラムを立てるというような基本的な視点が基盤とされるべきであります。 認定こども園のガイドラインの設定と実施に際しては、当初の意義・理念に照らして0歳児から5歳児までの一貫した育ちを捉える視点と、子どもの生活時間を細切れにしない連続性の確保のための配慮が求められます。
5.(直接入所契約方式の弊害について)
この度の保護者と施設による直接入所契約方式の具体化に際しては、本来優先されるべき低所得層や母子家庭等が排除されることのないよう、法案でも配慮する内容となっています。しかしながら、しくみの上では施設との直接契約の場合、保護者からの順次申し込みに契約していくことで、次年度の受入れ枠が早期に定員に満ちてしまえば、仮にそれ以降母子家庭等のニーズがあっても優先することはできなくなります。さらに市町の入所判定基準が必ずしも明示されていない地域も多く、実際には個々の園での判定も非常に困難でありそのための混乱も危惧されます。 また、幼稚園では通常秋口から次年度の子どもの受け入れ募集を行っている現状から、例えば第2類型にあたる幼稚園型の認定こども園が、早期に保育に欠ける子どもも募集していくことにつながります。結果的に、これまでの保育所保育における最低基準を満たしていない施設に先行して子どもたちが入る状況が生まれます。一方で、子どもの生活環境の質が整っている認可保育所において、地方によって多少差異があるとしても、翌年の選考会議等を経て2、3月頃に内定し、できる限りすべての希望者に4月入園が公平かつ計画的に行われているしくみが壊れることにつながります。 以上のような問題も含めて、直接入所契約方式の弊害が拡大しないための様々なしくみの確保を今後、国ならびに都道府県レベルでしっかりなされることを求めます。
6.(保育料の設定に際して)
保育料は認定こども園が設定するという、いわば「自由価格制」をとることは、競争の促進により安易に「安き」に流れることになると同時にコストを圧縮してしまうことにもつながります。保育・教育のほとんどのコストは人件費であり、それを圧縮するために期間限定の契約職員や短時間職員、アルバイターなどの活用が急速に広がることが予想されます。このことは、保育の質的向上につながらないのみならず、乳幼児保育・教育が知的技術習得という目先だけの早期教育に流される危険性をも孕むものです。保育料の設定に際しては、上記の点も十分考慮される具体的なしくみが国ならびに都道府県レベルでなされることを求めます。
平成18年4月10日
保育所と幼稚園の一体的な運営をめざした「総合施設」について、これまで厚生労働省と文部科学省の合同で検討がなされ、平成16年12月の「審議のまとめ」では、子どもの最善の利益を守り、子どもの視点に立つ見地から、総合施設のあり方が論じられました。この間、日本の保育、幼児教育のあり方について熱心な意見交換等が行われたことを含めて、先ずは関係者の方々のご苦労に敬意を表します。社団法人 全国私立保育園連盟 保育制度検討会
しかしながら、今回の「認定こども園」に関する法律要綱案ならびに法律案は、「子どもの視点」を守る立場から、現実の制度を「どのようにつなぎ合わせるか」ということに重点がシフトされ、当初構想された理想像からは大きな隔たりを感じざるを得ません。
子どもの視点が希薄になっていることについては、制度的な課題と保育内容にかかわる課題の二つの側面からうかがえます。認定こども園の具体的な実施に向けては、何より子どもの視点を優先する立場からとくに次の事項が最重要課題であると考えます。国ならびに都道府県レベルで以下の点が考慮され、とくに認定基準の基礎となるガイドラインの策定に向けては、将来の日本の保育・幼児教育全体のレベルがより一層向上することにつながるものとなるよう十分に対応されることを望む次第です。