公益社団法人 全国私立保育園連盟

保育

自己主張は大事ですが…
鯨岡 峻(京都大学名誉教授)

 子どもの自己主張は大事だと述べたばかりですが、では子どもの自己主張は何でも通せばよいかといえばそうではありません。子どもの自己主張を何でも「はい、はい」と受け入れすぎれば、子どもは自分の思ったことはいつでも叶えられるという万能感を抱くようになり、思いが通らない時には癇癪を起こすようになってしまいます。そうならないように、子どもは日々の生活のいろいろな場面で、自分の自己主張は通る時もあれば、通らない時もあるという経験をすることが大事になってきます。

 例えば、おもちゃ売り場でおもちゃを買ってほしいという自己主張は、子どもの思いとしては当然の主張ですが、お母さんとしてはそのほしい気持ちに添って買ってあげる時もあれば、ほしい気持ちはわかっても今日は買ってあげられないと突っぱねる時も必要です。

 この時大事なのは、お母さんとの押し問答が、すべて自分の思い通りにいくわけではないというふうに子どもに経験されることです。その時、お母さんの側には、子どもの自己主張に応えてあげられなかった事情を、子どもが納得できるように伝えていくという難しい対応が求められます。子どもが自分の気持ちに折り合いをつけられるように、「今度買ってあげるね」とか、「その代わりに、こうしてあげようか」などの提案をしてみることも必要でしょう。

 自己主張が通らない経験を通して、子どもは何でも自分の思い通りにできるわけではないという経験と、お母さんにはお母さんの思いがあり、それは自分の思いとは違うという二重の経験をすることになります。それが、その後の対人関係の中でとても重要な役割を果たしていくことになるのです。

>③1歳半からの自己主張と友だち関係