公益社団法人 全国私立保育園連盟

保育

心の育ちの中でも 信頼感と自己肯定感は必須のものです
鯨岡 峻(京都大学名誉教授)

「教育」は大人の一方通行の働きかけではありません

 教育というと、人はすぐ、何かを教える、何かをさせることだと考え、こうしなさい、これはいけませんと、次々に指示を出すことだと錯覚しがちです。お母さんたちの世代がまわりからがみがみいわれて育てられたことが、そのような錯覚に一役買っているのかもしれません。
 しかし「教育」という営みは、大人の「養護の働き」と「教育の働き」がうまく組み合わせられて子どもに振り向けられ、しかもそこに子どもの側の学びたい、知りたい、そうしてみたいという思いが絡んできて初めて、子どもの真の力になりかわるような営みです。ですから、指示、命令の形で「教え込む」ことは、決して本当の生きる力に結びつきません。大人への信頼感と自分への自己肯定感を背景に、子どもの学びたい気持ちが生まれ、そこに教える働きがうまく絡めば、その時、大人の願う力が子どもに育ってくるのです。
 大人の教えたいという思いと、子どもの学びたいという思いが結びつく時に、もっとも願わしいかたちの「教える─学ぶ」の関係が生まれます。この時、子どもは学ぶことが楽しく、また嬉しいと思えるでしょう。
残念ながら、今わが国の育てる営みの中に、このような願わしい「教える─学ぶ」の関係は定着していません。大人の側からの一方通行の指示・命令の教える営みは、勉強嫌いの子どもを多数生みだす結果にしかなっていないのです。

第10回は6月上旬に更新予定です。

*この連載では、「保護者」という言葉を「お母さん」という言葉に置きかえてすすめていきます。