公益社団法人 全国私立保育園連盟

保育

「育てる」とはどういう営みでしょうか?

鯨岡 峻(京都大学名誉教授)

「教育の働き」とは

  子どもは未来の大人です。大人の「育てる」営みは、子どもが将来大人になる存在であるからこそ必要になってくるものでもあります。これから大人になるためには、今はまだできないことが、次第にできるようになっていかなければなりません。

 その中には、寝返ったり、歩いたり、走ったりなどの一連の運動行動や、言葉やコミュニケーションのように、普段の大人との生活の中で自然に身についていくように見えるものもありますが、多くは、大人が手ほどきし、子どもは見よう見まねで、あるいは教えられて身につけていくものが数多くあります。ですから、「育てる」営みは「養護の働き」だけでなく、大人のこうしてほしい、こうしてほしくない、こうなってほしいという一連の願いを伝える「教育の働き」もまた必要になってきます。

 身辺自立にかかわる一連の行為も、大人のいうことを聞きわけて振る舞うようになることも(こうしてほしくないという大人の思いに添って振る舞うようになることも)、それに向けて、まずは大人が「これをしてみようか」「してみない?」と優しく誘い、その誘いに乗ってくれば、子どものしようとするところを見守り、子どもがやりかけたことを投げだしそうになれば、「もう少し頑張ってみよう」と促し、行き詰まれば、「ここはこうすると上手くいくよ」と優しく教え、大人の願いから外れた振る舞いには、「それは止めてね」「それはダメよ」と優しく禁止や制止を示し、それでもいうことを聞かない時には「それはいけません!」と叱ることも必要になってきます。

 要するに「教育の働き」とは、大人の願っているところに子どもを導いていく一面をもつということで、それを通して、子どもはいろいろなことを身につけ、一歩一歩大人に近づいていくことができるようになります。これが目に見える子どもの成長の姿であることはいうまでもありません。

 ここで注意を要するのは、この「教育の働き」が強くなりすぎたり、時宜を見定めずに大人の都合で振り向けられたりすると、子どもの成長を促すどころか、それを邪魔することになりかねない危うさをこの「教育の働き」が抱えているということです。

 今回は、「育てる」営みが「養護の働き」と「教育の働き」の二面からなることを簡単にスケッチしてみました。次回は、今回の話をもう少し掘り下げてみます。

 第7回は3月上旬に更新予定です。

*この連載では、「保護者」という言葉を「お母さん」という言葉に置きかえてすすめていきます。