公益社団法人 全国私立保育園連盟

保育

「育てる」とはどういう営みでしょうか?

鯨岡 峻(京都大学名誉教授)

「養護の働き」とは

 人間の赤ちゃんは、一人では生きていけない未熟な存在として生まれてきます。まわりにいる大人(多くは親)がそのいたいけな存在を慈しみ守り育てなければ、その存在は生きていくことができません。それは、親が育児放棄をした場合や虐待をした場合の報道に明らかです。子どもの命を守り育てることは、まわりの大人の責務だといえます。それは当たり前のことですが、その当たり前が自然に行われるためには、まず、子どもを前にした時に、大人には優しい気持ちになって温かく包むような姿勢で接することが求められます。

 子どもを可愛いと思い、慈しむ気持ちになり、子どもの求めに応えていこうとする大人の優しい気持ち、つまり、「あなたは大事な子」「あなたのことを守っていく」「あなたのことが可愛い」と思う大人の気持ちや気構え、これが「養護の働き」です。初回は、この「養護の働き」を念頭に置いて、子育てには「愛情」が何よりも必要なものであることを指摘したのでした。

 赤ちゃんはまったく何もできないという意味で未熟だといっているのではありません。最近の研究が示すように、赤ちゃんは泣いて訴えて自分の思いを表出することができ、それによって大人の対応(授乳やオムツ替え)を引きだす力があります。3か月を過ぎる頃からの満面の笑顔は、お母さんから「可愛い!」「目に入れても痛くない!」という気持ちを引きだす力をもっています。しかし、いつもそうかといえばそうではありません。理由のわからない泣き、むずかり、不機嫌、癇癪など、親を困らせることもたくさんします。だからといって、「もう知らない!」「勝手にしなさい!」では子どもは育つことができません。

 つまり、望ましい状態の時だけでなく、望ましくない状態の時にも、大人は子どものすべてを身に引き受けて、子どもの状態をよい方向にもっていこうと努めることが求められます。その時に欠かせないのが「養護の働き」なのです。

 大人の側の気分次第でかかわればよいのではなく、どんな事情の下でも、子どもの存在を温かく包み、子どもの命を守り、子どもの思いを受けとめ、その子の幸せのために心を砕いていこうとする姿勢が「養護の働き」であり、これは、子どもが思春期を過ぎて一人前に近づくまで必要なものだと思います。

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