公益社団法人 全国私立保育園連盟

保育園のこだわり

シンガポールではICTが自然に“そこにあります”・シンガポール

1昨年に続き今年で2回目になるシンガポール保育視察研修。昨年訪れた園では、年長児がデジタルカメラでコマ撮りした粘土の人形を動画に編集して、タイトル、字幕、音楽をつけ、YouTubeにアップしたプロジェクトの発表や、PCがずらっと20台程並んだ「パソコン部屋」を見学して、幼児教育にICTがそれこそ“道具”として取り入れられている様子に度肝を抜かれました。

2今年は、プログラミングの初歩的な概念をてんとう虫型のおもちゃを目的地に向けビニールシートに井桁状にプリントされたレールの上を走らせる遊びをしている園児を見かけました。
いずれの光景も、PCやデジカメといった道具が身近にあって、それを手にと  って「遊びを通しての学び」でありPCやデジカメの使い方の習得、使いこなすこと、それを使って何かをしなければならない、ということが目的ではないところが子どもたちの姿から見て取れる。

3「園長先生がiPadを買ったけど、それをお部屋でどう使ったらいいんだろう?」というケースがありがちな今日この頃の保育現場ですが、「(表現活動の教材として)クレヨンや画用紙、のり、iPad、デジカメ、パソコン」と考えると、気楽に取り組めるのではないでしょうか? 「高価=もったいない」では本当にもったいないです。

ESD(持続可能な開発のための教育)活動・ソウル

01ソウルの幼稚園では、ESD(持続可能な開発のための教育)活動が自然に行われています。

2016年6月に世界幼児教育・保育機構(OMEP)が韓国ソウルの名門女子大学、梨花女子大学で開催した世界大会に参加し、発達障害児プログラムとICT活動を中心に分科会で各国から集まった保育者による発表を聞きました。

02また、公式プログラムとして郊外の幼稚園訪問があり参加しました。園到着が4時頃になり、すでに多くの園児が降園した後の時間帯であり、園児が遊び、学ぶ様子を見ることはできませんでしたが、物的環境については十分に観察することができました。

訪問した 幼稚園には3階建で園庭は屋上。屋上には折りたたみプール、菜園、それに大型のソーラーパネルが取り付けられていました。また、クラスのゴミ箱はリサイクルに対応しており、その暖かい色使いから園生活の中に自然に組み込まれていると感じました。

032階フロアの共通スペースには、イグアナなどの小動物が豊富に飼育されており、観察力や飼育を通しての食育、命の尊さが学べる工夫がなされています。

ESDは身近なところから、長続きする形で。そして、小さい頃からが大切だと実感しました。

人生の始まりは力強く~ドイツ・ミュンヘン市の園を視察して~

理念の木ドイツ・ミュンヘン市の園を視察してきました。この園は園長先生が13年前日本を訪問し、以後その体験を基に園改革をしてこられました。

園の理念が木の形で表されています。枝や葉っぱの部分には、「健康」「運動」「科学」「音楽」「芸術」など子どもたちの活動が表示されます。木の太い幹部分には、「学ぶことを学ぶ」「遊び」「生きる力」「社会文化の多様性と個々の統合」「開かれた園業務」とあります。

理念の木の幹創立20年目を迎えるこの園は、「遊びは子どもの職業」との考えのもと、保育士からの一方的な指導方法から保育士と子ども、そして子ども同士の交流を大切にする園となってきたとのことです。

困った時には『バイエルン教育プラン(BEP)』を紐解き、子どもの選択を保障する子ども主体の保育を実施しています。お部屋が遊びの種類で分けられ、動と静、内と外、多様な感覚を養う園環境となっています。

保育室の風景ところで、「理念の木」の根っこ部分は0歳から3歳までの育ち。人生の始まりを 子ども自らがしっかりと作り上げることを目標としています。「乳児から異年齢」での関わりを重んじ、コーナーでの自発的な遊びを大切にしています。生命力豊かで、力強い人生を送るための始まりを木の根っこで表現しているのですね。

民主主義を大切にし、子ども観を職員間で共有し、BEPに則った保育を実施する園の見学から学ぶところがたくさんありました。

K-6・シカゴ

 1今年7月に米国シカゴ郊外の小学校を訪問しました。友人の奥さんが4年生の教員で、夏休み中で静まりかえった校舎内を案内してもらう機会に恵まれました。アメリカの街中をドライブしていると“K−6”とか“K−9”といった看板を掲げた学校を見かけることがあります。“K”はKindergarten(幼稚園)で、6は6年生、9は9年生(日本の中学3年生)を指します。私が訪れたのは“K−6”の公立学校です。

 この4月に保育所から幼保連携型認定こども園に移行し、園運営・年間指導計画策定に際して、小学校への“接続”をこれまで以上に意識するようになり、いわゆる「小1の壁」の解決策のヒントを探しに行ったわけです。

2 私個人も90年代はじめにロサンゼルス郊外に前職で転勤になり、当時2歳、3歳の子供を帯同し現地校に通わせましたが、その学校も“K−6”のシステムで、幼稚園は小学校の校舎の一角にあり、物理的には「小1の壁」は存在せず、心理的にも小学校への進学は親としてなんら気にかけることもなかったし、子供達にとってもストレスはなかったと思います。

 今回訪れたシカゴの学校も“K”は1年生の隣にありました。小学校の教室は、日本のように“教壇+黒板”が上席(先生の場所)で、縦横綺麗に並んだ机と椅子は生徒の場所といった明らかな区別はなく、また生徒が寛ぐソファーや本棚などがどの学年の教室にも置かれ、生徒の席は黒板の前に半円形にレイアウトされています。

授業もディスカッション中心。タブレットでプレゼン資料を生徒同士が作って、プロジェクターで黒板に投影してさらにディスカッションを進める方式を4年生では取っているとの話でした。先月、園のある市内の小学校の公開授業で2年生が九九を合唱したり、黒板に書かれた九九の穴埋め問題に答えを順番に教壇に上がり書き込む姿を見て、壁の原因を見つけたような気がしました。

ほっと一息つける場所-デン-・鳥取県

写真1耐震工事による園舎の全面改築工事に伴い、新たなスペースが園内に誕生しました。

写真3その名も「デン」

デンとは英語でDEN、野生動物の巣、ねぐらという意味でそこから狭い空間という意味でも用いられている言葉です。

人間は本能的に狭い空間を好むそうで、この本能は胎児の時に母親のお腹の中にいる時に作られるそうです。

私たちの園のデンも畳1畳程の狭い空間で、1Fフロアーと2Fフロアーに1ヶ所ずつ設けています。そこは心が温まる場所、安心してくつろぐ事の出来る空間となっています。

子ども達の成長過程において、友だちとのトラブルやいざこざ、自分自身との葛藤等様々な場面が登場します。

写真2そんな時この空間に入ることで緊張をほぐし、気持ちをクールダウンする事で、又次の活動へと気持ちを切り替え、元気に取り組んでいます。

子ども達にとって、保育園は昼間の「お家」。ほっこり・リラックスできる空間があってもいいのではないでしょうか。

『一人ひとりが『私』であることの保障(音・光・色と対話する部屋)』 -マレーシアの乳幼児保育教育園の取組みから-

どの保育室からもアクセスできる園庭 多民族多宗教多文化国家であるマレーシア。国の正式な独立は1965年、面積は日本の約0.9倍、人口は日本の約6分の1という小さな国ですが、2020年までに先進国の仲間入りをしよう!と近年、幼児教育に社会的関心が高まっています。

貧富の差や多様な民族間での教育機会均等、格差是正を目指す中、どうしても保育が一斉、教師主導になりがち・・・。

そうした中、中部に位置するサルタン大学の附属保育教育施設であるUSPIセンターでは、「子どもの興味・関心を育み、探究的な生活と学びを」とプロジェクト活動を保育の特徴の一つとして展開しています。

私が私としていられる空間 スヌーズレン・ルーム加えて、一人ひとりのニーズに応える保育として力を入れているのが、インクルージョンです。特に、集団生活を難しく感じる子どもには「私が私であることを保障する空間」として、スヌーズレン(Snoezelen)の部屋があります。

音との対話の空間スヌーズレンはもともと重度の知的障がいを持つ人が感覚刺激教具空間の中でリラックスしつつ感覚器官を養うこととしてヨーロッパで普及しています。

UPSIセンターでは、子どもが自分と対話したり、イライラした時に情緒をコントロールしたりする空間として活用されています。音と光と色の融合が子どもが自分と出会い対話する時を誘っているのです。

 

 

民俗伝統を大切にするハンガリーの保育園・ハンガリー

刺繍私たち日本の保育園でも、行事を通して文化伝統を大切にしています。私たちが訪問したハンガリーの保育園でも民族に伝承されてきた生活文化を、園の活動の中で再現し体験しています。

秋の装飾民族的、文学的なお話に触れながら母国語を学び、豊かな想像力を生み出す体験をします。民謡を歌い、民族舞踏を踊って、歌や踊りを通して伝承文化に親しみます。そして、書くこと、色を塗ること、模様をつけること、といった描画や製作にも伝承文化や田舎の生活が反映されます。

今回「ハンガリーの保育園のこだわり」では、子どもたちが先生と一緒に製作している「刺繍」や「秋の装飾」、「胡桃のろうそく立て」の写真を紹介します。

胡桃のろうそく立て私たちが訪れた時、家畜やペットを題材に刺繍の製作に取り組む姿も見られました。これはクリスマス装飾にもなるそうです。「秋の装飾」では、ハリネズミやキノコ、そしてブランコのリスなど民族の生活文化の中で親しまれているものが採用されています。

「胡桃」はさまざまな製作に使われますが、胡桃を配したろうそく立てもなかなかオシャレな作品です。また、数の活動でも使われており、ハンガリーの子どもたちがもっとも親しんでいる木の実のひとつなのかもしれません。

保育室の色をコーディネートする視点・ハンガリー

01ハンガリーのマイバ乳児保育園もみの木組の洗面スペースは、見事にグリーンでコーディネートされています。また、保育室はイエローでコーディネートされていたりします。

02

色を整理することによって、空間が美しくなり、心地よいものとなります。

色の持つ雰囲気やまた色から出されるエネルギーで気持ちが落ち着いたり、元気が出たり、あたたかい気持ちになったりもします。

03たくさんの色を使うときは、さらにコーディネートが難しくなりますが、色調をそろえることで、調和します。

またアクセントカラーといった考え方もあります。

なんとなくセンスがよくて美しいなと思う保育室、色を意識して整理し、心地よい保育環境を作りたいものです。

アイルランドの保育園を訪ねて

広大な園庭7月に開かれた世界幼児教育・保育機構(OMEP)の第66回世界大会参加の機会を捉え、開催地であるアイルランド第二の都市コーク市内にある保育園を訪問しました。

ベスボロー・センター保育園は70年の歴史を持つ城壁に囲まれた広大な敷地内にあり、就労支援施設、家庭内暴力から避難してきた親子の寄宿舎、障害児親子の寄宿舎など、幅広い分野での社会福祉事業を展開しています。


伐採した木でつくられたベンチ保育園は生後4ヶ月から満1歳、満1歳から満2歳、2・3歳児、3・4歳児、4歳児の5つのクラスに分かれており、8歳までの学童保育施設も併設されています。「園庭」というよりは「大きな公園」と呼ぶのが相応しい場所には様々な樹が植えられており、そのメンテナンスも行き届いており、所謂日本流の「お散歩」という活動が無い海外の保育園では、安心して園児が緑を楽しめる空間になっています。園内移動の乳児用の乳母車もかなりしっかりしたものでした。

園庭移動用の乳母車「こんな広大な場所で園児が遊ぶと、迷子や所在不明で心配にならないですか?」という質問に対して「子どもたちは自分の安全でいられる境界を知っていて、自分から保育士が見えなくなるような遠いところには行かないですよ」との答えでした。 

園庭の木を伐採して手作りのベンチや遊具が作られており、廃材など一切ださず、木の皮はチップ状にして使うなど、ESDの実践も目にする事が出来ました。

上海浦南幼稚園を訪問して

2013年7月、OMEP上海大会に参加した折、上海市のモデル幼稚園のひとつ浦南幼稚園が公開されました。中国は2010年に幼児教育10カ年計画をスタートさせており、国家予算を重点的に就学前教育に投入しています。

2010年から2012年の2年間で幼稚園の新設が30,900園と急速な増加ぶりと報告されました。上海市もその政策の一環で幼児教育の近代化を図るために、モデル園を行政区毎に設置しています。

屋外環境はソフトな素材で舗装された運動場と遊具空間そして芝生のエリアが整備されていました。写真はすぐにでも活動が展開できるように配置されている運動器具です。

保育室を巡って強く印象に残ったことは、保育室毎の遊具・教材が見本市会場のように機能別に配置されていたことです。カラオケごっこにはカラオケ用玩具が、建設現場ごっこにはヘルメットが完備という道具立てでした。お店やごっこの部屋ではATMの模型、美容室には本物仕立ての化粧品セットが並びます。

ことさらに文字や数の指導はしていないとの説明でしたが、遊んでいる様子からはボードゲーム等のレベルは高く、すでに読み書きができていることを示していました。

子どもたちの遊びに必要なものは、完璧に揃えるという意志が見事に示されていました。日本のマンガ・キャラクターが大きく壁面装飾に使われていたので意外に思いましたが、「子どもたちが好きなので」とおおらかでした。