公益社団法人 全国私立保育連盟

研修報告

開催日程
平成29年2月23日(木)~24日(金)
開催場所
横浜市

今回は横浜市私立保育園連盟様のご協力を頂き、8回目となる異文化コミュニケーション・トレーニング・セミナーを開催しました。講師は、パワフルかつ楽しい講義とワークショップに定評がある鈴木有香先生(早稲田大学紛争交渉研究所招聘研究員)。

第21回保育国際セミナー 043「コンフリクト・マネジメント」というタイトルに参加者は「どんな研修?」と緊張気味の様子。しかし、そこは有香先生の研修。導入から本題へと進むにつれ、参加した先生方の表情がどんどん和らいでいきます。実際、体を動かしながら参加する「ウォーミングアップ」で緊張感も解け、参加者みなさんの良質な関係構築の始まり。人間関係作りのポイントは、違いをクローズアップさせるのではなく、共通点を見つけ出すこと。その大切さに気付く時間でした。参加者アンケートには「期待をはるかに超えました。『研修』という堅苦しいイメージとは全然違いました。楽しみながら参加できたので、自然と体に入り込む感じでした。」とありました。

講義は進んで「POWER(パワー)」について。与えるパワー、貰えるパワー、いろいろなパワー。参加者は有香先生の講義にしきりとうなずいています。パワーをポスター表現する「芸術活動」。このポスター制作にもさまざまな仕掛けが施されます。

第21回保育国際セミナー 062参加者からは「本来の自分がさらけだされたように思えた」とか「どれも関心を持てましたが、やはり保育の現場としてはポスター作りの中でそれぞれ違っても素晴らしものができるということです」などの感想が寄せられました。みなさん、自分自身を振り返る良い機会となったワークショップ参加だったようです。

研修2日目は異文化シミュレーション体験「エコトノス」。「それぞれの集団には文化があります。文化とは集団に共有されているいろいろな約束事の総体です。」(研修資料より)。その約束事の違う集団が交渉を始めたら、どのような事態が起こってしまうのでしょうか。このワークショップを通じて、文化の違いから生じる驚きや葛藤を体験したようです。

参加者アンケートから「文化や価値観を統一することできないけれど、それを少しでも近づけるために、たくさん話をすることが大切だと思った」「人それぞれの感じ方や考え方があると理解していましたが、文化・格差となるとまだまだ勉強が足りないと思いました。まずは相手を知るということがいかに重要かを学びました」。多文化共生の難しさを疑似体験しながら、参加者一人ひとりがたくさんの気付きと学びを得ました。

第21回保育国際セミナー 074本研修に参加した先生方からは、「本当に参加して良かったです。凝り固まった考えから脱出していき、柔軟な考えができるようになりたいです」「保護者対応のとき、いろいろな場面で使ってみようと思った」「頭でっかちな上司にならないよう、頑張ります」「楽しく笑い続けたセミナーでした」「頭も使ったが、体験を通していろいろと学べたので忘れない」などポジティブな感想をいっぱい頂戴しました。

「次年度、他職員に参加してもらおうと思います」「たくさんの方にこの研修に参加していただけたら良いと思います」「このような研修の機会をさらに増やしていただけるとありがたい」等、本研修の次回開催に期待を寄せて頂きました。職場内の良い人間関係づくりこそ、子どもたちが健やかに成長発達する人的環境と言えるでしょう。

(保育国際交流運営委員会委員 中山利彦/新宿せいが子ども園)

開催日程
平成28年11月9日~11日
開催場所
新潟県・万代シルバーホテル

01 11月9日~11日新潟万代シルバーホテルにて、東京家政大学の那須信樹先生、篠原保育医療情報専門学校の鈴木健史先生、諏訪保育園園長の島本一男先生、大妻女子大学の岡健先生を講師にお迎えし、保育の記録について学びました。

 02初日は那須先生の、日常の記録を活用して保育の質を上げる記録のあり方や、園内研修のあり方のお話を聴きました。二日目は、鈴木先生がファシリテ―タ―となり、保育の中で大切にしたい価値を各グループで文字や絵で表現し、聴く・伝えることの大切さを意識しながら共有し合いました。その後、島本先生が保育園で実際に活用されている記録を通して、集団で活動する指導計画ではなく集団をつくる指導計画の必要性を学び、各グループで計画書を作成し、共有しました。

 03最終日の岡先生は、保育の中で振り返るものとして位置づくための記録のあり方や、記録を活用した園内研修のあり方についてお話してくださいました。3日間を通して、「記録とは何だろう?」「何のために記録をするのか?」に立ち帰り、今の保育の質が問われる中で、保育実践を「見える化」していくためにどんな記録にすべきかをひとりひとりが考えさせられた研修でした。

開催日程
平成29年9月14日~16日
開催場所
山梨県・清里

019月14日~16日山梨県清里にある公益財団法人キープ協会清泉寮に全国各地から64名の参加者が集い園長セミナーが開催されました。

初日は汐見俊幸先生をお招きし保育のグランドデザインについてお話しいただき、2日目はそれを受ける形で久保健太先生と研修部員の園の実践を交えながら保育を深めました。

02そして夕刻からは小西貴志(ゴリ)さんと坂上秋津さん(あきっちゃん)の森の散策、スライドショーに心を癒され懇親も深まりました。

3日目は井桁容子先生をお招きし乳児期からの丁寧な保育の大切さや人として対応することの大切さを学びました。

03それぞれに何か一つは園に持ち帰ることができたのではと感じています。

開催日程
平成28年2月23日(火)
開催場所
東京都・浅草ビューホテル

01平成28年2月23日(火)浅草ビューホテル(東京)にて全私保連青年会議主催による第11回特別セミナーが、「リーダーの視点」~果たすべき役割とこれからの広報戦略!~をメインテーマに、講演会、パネルディスカッションの二部構成で開催されました。

第一部では、矢藤誠慈郎氏(岡崎女子大学教授)による講演「保育の質を高める人材育成」〜組織マネジメントの視点から〜と題し、ご講演いただきました。

経営とはお金を儲けようとすることではなく、限られた資源を活用して最大限の成果をあげようと努力や工夫のことである。したがって、保育施設に「経営」は欠かせない。保育施設が経営を意識してきていないとは言わないが、経営の対象が何かについては十分に理解されていないかもしれない。最も重要なのは組織の「価値」を経営(マネジメント)すること。保育施設で言えば、質の高い保育をして子どもの最大限の育ちを保障することができていなければ、保育施設としての価値を問われることになる。では、どうすればいいのか。現場の先生が良い保育を考えて出来るようにならなければならない。一人で考えるのではなく、組織で考えていく必要がある。

02第二部では、パネリストに大江恵子氏(りとるぱんぷきんずグループ 統括園長)、瀬木葉子氏(株式会社保育のデザイン研究所 代表取締役)、志賀口大輔氏(なごみこども園 園長)、脇淵竜舟氏(全私保連青年会議 副会長)、第一部でご講演いただいた矢藤誠慈郎氏にコーディネーターで再びご登壇いただき、パネルディスカッションを行いました。

パネルディスカッションでは、リーダーとして果たすべき役割と広報戦略を、それぞれの立場から具体的な例も含めて、お話をいただきました。

リーダーの資質と人材育成について、人の人材育成の前に自らの人材育成、尊敬されるリーダーを目指す。リーダーの資質として、①「前向き、素直、謙虚」であること。②明るく元気であること。③「情熱、志、信念、感謝」をもつ。④決断力と責任感、そして覚悟をもつ。⑤至誠の心で成長を続ける。⑥感情をマネジメントする。また、リーダーの視点として、職員には求めるよりも認めること(美点凝視)が大切である。そして、リーダーは「何を目指し、何を成し遂げることが使命なのか」 、「組織」「保育」「広報」など、園運営にかかわる様々なことを考え、「それは何のためにするのか」という原点、常に本質は何であるのかを見極めていくことが大切である。

保育士不足について、保育士定着施策調査報告書のデータをもとに話をされました。

全体として、効果が高かったのは「職場環境の改善」と「職場の人間関係」の施策。人間関係に関する施策として、効果が高いのは相談や異動等の事後対応よりも、「日常の指導・心構え」「教育・研修」等の「予防」。また人材育成の施策としては、「外部研修参加支援」を導入している事業者は多いが、「社内研修の実施」の方が効果は大きい。

「これを行えば圧倒的な効果がある」というような施策があるわけではないが、様々な施策を取り入れ複合的に対応することが大切で、園長等のマネジメント、保育者の良好な人間関係構築等に関する指導・研修が保育者定着につながると言えよう。

03テーマにある広報戦略の広報の意味を考えると、PR(パブリックリレーションズ)である。PRとは、一般社会と良好な関係を構築し、それを維持すること。伝えたいことをやりたいように表現する広告とは根本的に違う。広報・PR活動に必要なのは、客観性と公共性。①「言いたいこと」ではなく、「求められていること」②徹底的に我を知る。③「自分の利益」ではなく「みんな利益」④「よく見せる」ではなく「ありのまま」⑤「ありのまま」だけど、「心地よい演出」を。⑥「結果」「効果」にこだわりすぎない。⑦「派手に一発」ではなく、「地味に継続」⑧あふれんばかりのサービス精神。⑨みんなが喜ぶことをやる。

例えば、クルマを買うときのことを思い浮かべてみましょう。納車までは毎日のようにカタログを眺めたりwebサイトを見たりします。でも、手元に届いた瞬間それらから遠ざかります。こども園でも同様で、最もアクセスするのは「まだ直接的な関わりを持ってない人」です。もちろん在園児のためのコンテンツもある程度は必要ですが、紙媒体のおたよりなどがあるわけですからあくまで二の次です。ここを明確にすることが機能的なデザインにつながります。

04具体的な取り組みとして、浜松市のこども園では、4つの機能が一体となった複合施設を開設している。①就労支援機能業、②子育て支援機能、③カフェ、④おもちゃと絵本の販売。地域の需要を拾っていくことで、子育て支援ひろばの利用者数は2年ほどで、5倍に跳ね上がった。どこでも真似できるケースではないが、ひとつのPRの形として、成功した例ではないだろうか。

この度のパネルディスカッションのテーマを考えると、どの先生も奇を衒っている訳では無く、極めてオーソドックスな事をしています。しかし、多様なアプローチをいくつも試し、ひとつがダメだったからと言ってやめてしまうのでは無く、出来ることを少しずつ増やしていくことが大切なのだということを教えいただいたように思います。

開催日程
平成27年11月4日~6日
開催場所
静岡県・沼津市

今年度の保育実践セミナーは、富士山と駿河湾を望む、風光明媚な港町、静岡県は沼津市で11月4日から同6日までの3日間の日程で行われました。地元静岡県の保育所連合会の協力もあり、定員を超える参加者が全国から集まりました。

テーマは、「これからの時代に求められる保育・教育の姿を「環境」の視点から考える」とし、初日・二日目は「保育環境評価スケール」、三日目は「心の育ちの発達段階とそれぞれの段階における『養護』と『教育』の有り方」について学び合いました。

詳しくはこちらをご覧ください

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開催日程
平成27年9月16日~18日
開催場所
山梨県・清里

01霧に覆われた清里の地で今年も園長セミナーが開催されました。新制度元年にあたる年にこれまでの保育を振り返り、今を生きる子どもたちの育ちを考え、気持ちに寄り添う保育への転換を目指していくことをともに学び、語り合い、明日につなげることを目的に企画されたものです。

初日は養護と教育が一体的に行われる「保育」と教育基本法における「教育」について無藤 隆先生(白梅学園大学教授)に法令に基づいたとらえ方を丁寧に説明を頂きました。また、「学びに向かう力」を育てることについては、幼児期の遊びと学びの大切さ、そのためには興味を持ち、集中する、挑戦する環境が重要であるということを話されました。

2日目は子どもと保育者と保護者、地域の関係がこれまで以上につながりを大切になることを踏まえ保育実践、保育環境、労働環境の「質」の向上について、大豆生田啓友先生(玉川大学教授)よりご講演いただきました。保育の質を高めている園に共通することは、「子どもの姿を語り合う」風土があり、「職員同士の関係性」が良いこと、そして子どもと大人に仕掛けを作るリーダーがいることが重要であるということをお話いただきました。引き続きグループワークに移り、中村章啓先生(野中保育園)の話題提供をもとに、映像を使って「子どもの生活を見つめることで、気付きの質を高めること」、「育ちとは?遊びとは?見ることとは?」等について、参加者同士学び合いました。

02夕方から、清里聖ヨハネ保育園新園舎見学を小西貴士先生((公財)キープ協会所属、同保育園・キープ森のようちえん担当兼写真家)と行いました。

最終日においては、研修のまとめとして「今までの保育を振り返るために」をテーマに「育ち」のとらえ方、子どもがどのように感じているかを汲み取り「今」の子どもの姿に丁寧に関わり「どう育っているのか」を見つめていく大切さを柴田愛子先生(リンゴの木代表)にお話しいただきました。

保育に携わる者が、3日間を通して「子どもたちが子どもらしく生きる“今”」を語りあい、見つめ直し、学びあうことができました。「大人と子どもがともに育ち未来を紡ぐ一歩」になる研修でした。

開催日程
平成27年2月19日~20日
開催場所
石川県・金沢市

平成27年2月19日~20日の2日間にかけて、金沢東急ホテルにて、表題の研修会(保育国際交流運営委員会が企画・運営)が開催された。全国各地から集まった参加者はおよそ20人。今回で6回目を数える研修会ということもあり、研修中のディスカッションにおける参加者の発言等々から各人に研修参加に至らしめた高い目的意識あるいは自身が抱える問題意識があることが読み取れた(今回は都合で1日目のみの取材となったので、それを中心として報告する)。

【講師の鈴木有香氏】【コンフリクト・マネジメントとは】
耳慣れない「コンフリクト・マネジメント」という言葉。そのまま訳せば「紛争解決」「紛争のコントロール」といった意味になると思われるが、すなわち「人間関係における自己と他者との関係性を整理・把握し、コミュニケーションを円滑に進めていくための手法」である。90年代後半に欧米で発祥した比較的新しいコミュニケーション理論で、日本では00年以降ビジネス等シビアな交渉を要する現場において注目されてきたという。

講師として招かれたのは、早稲田大学紛争交渉研究所招聘研究員の鈴木有香氏。コンフリクト・マネジメントの理論的な解説からそれらの実践やディスカッション、そしてその繰り返しという濃密なプログラムであった。

【研修の冒頭~チェックイン】
保育の現場では、日々様々なストレスが顕在化している。子供や保護者への対応はもちろんのこと、職員間の相互理解、上司である園長や主任保育士と現場の職員との関係性など、円滑なコミュニケーションが求められるシーンは数多い。そういった参加者共通の問題意識をベースとした研修ということで、「チェックイン」と呼ばれる研修の導入プログラムの時点から和やかな雰囲気で始まった。

この「チェックイン」という活動は、「現在の正直な気持ちや気になっていることなどをありのままに1分間話す」という一見単なる自己紹介のようではあるが、それには次のようなルールがある。

・並んでいる順番や講師の指示ではなく、話したくなった人から次々と話していく。
→自発性。能動的な姿勢。
・人の発言に対して質問したり突っ込んだりしない。
→他人の言葉をまずはそのままに受け止める受容性。
・無理に笑わせる、受けを狙うことはしない
→虚勢を張らず、自らをありのままに表現する姿勢。

これらを意識しながら研修に「チェックイン」することで、講師と参加者が本研修にどのような姿勢で臨むかが明確になった。相手をそのままに受け入れ、自らもそのままに表現するという姿勢。これは研修全体を一貫していたテーマである。

【ディスカッション】【研修の内容①~ウォーミングアップ】
「チェックイン」に続いて、「ウォーミングアップ」というプログラムが行われた。これは、「チェックイン」で参加者が共有した他者を受容する姿勢をより具体的に体験することが目的である。資料には遊戯のようなタイトルの項目が並ぶ。「パス回し」「これ何?」「鏡」「職業当て」・・・これらを通して、他者に意思を伝えることやそれを受け取ることの意味、その際に足かせとなる自身の思い込みなど、円滑なコミュニケーションに必要になること、あるいは妨げになるものが顕かにされる。

*パス回し
ジェスチャーで相手にボールを回していく。最初は声でボールを回す相手を指名してから回す。その後、声を出さずに相手の目を見たりジェスチャーのみで回していく。参加者は、声というわかりやすい合図がある場合よりも、無言のほうが相手をより観察し、受け取った際の実感も強いことに気付く。相手を受容するには、観察(よく見る、よく知る姿勢)が大切であることの示唆。

*これ何?
2人1組になり、一方が会場にあるもの(机、ペン、ホワイトボード、電話などなんでも良い)を指さし、一方がその名前を答えていく。しばらく続けたら、次に「指で差されたものとは全く無関係の名前」を答える。見たものをそのまま言うのは簡単だが、その逆は非常に難しいことに気付く。習慣と異なることをすることの難しさ、自分のパターンから抜け出すことの難しさの体験。

*鏡/職業当て
鏡は、対面した相手と鏡に映ったごとく全く同じジェスチャーをする。相手の動きをよく観察する。職業当ては、思い浮かべた職業を示すジェスチャーをして相手にそれがなんであるかを伝える。当てる側は相手を観察すること、ジェスチャーする側はどうすれば相手にうまく伝えられるかを工夫する。お互いが積極的にわかり合おうとする意識が大切であることの示唆。

これらの活動により、「チェックイン」で示された基本的な姿勢がより深く理解された。

【研修の内容②~パワーについて】
「パワー」という言葉で思い浮かぶことはなんであるか。例えば「権力・圧力・命令」といった強制的かつネガティブにも観じられるパワーもあれば、「底力・喜び・はげまし・エネルギー」といったポジティブな印象を受けるパワーもある。
人間は日常の中で様々な力によって支えられたり、流されたり、突き動かされたりしているわけであるが、「ウォーミングアップ」に続いて「私のパワー」として参加者それぞれが感じることをまとめた。

まとめるにあたって提示されたのは、「私の長所・強み」「私の短所・弱み」「私にある可能性、私を支えてくれるもの、こと、人々」「私の行動を萎えさせるもの、こと、人々」の4つの項目。自らとその周りのあるポジティブな力とネガティブな力とを分けた。
まとめ終わって自分の長所や短所、自分にとって有り難い力や受け入れがたい力を示す言葉を眺めていると、あることに気付く。それは、自分が長所と思っていることを他人が短所として挙げていたり、自分を支えてくれている力が、他人にとっては足枷のようになっているということである。これは、自分が短所や欠点であると捉えていることが見方を変えると長所にもなり得る、その逆もまた然りということであり、それらは個々の特性に過ぎないのである。「パワー」を生かすも殺すも自分の捉え方次第であり、また、一見受け入れがたい個性や考え方を持つ相手であったとしても、相対的な視点を持つことがそれらを理解する糸口になるということではないだろうか。

【①②を受けて、より体験的活動へ~「芸術活動」】
参加者が班に分かれ、それぞれに紙袋が渡された。その中にはペンやら紙やら雑誌やら様々なものが入っている。それらを材料にして「パワー」を感じさせるポスターを制限時間内に作り上げる。それが「芸術活動」である。

このプログラムにはひとつポイントがある。それは、紙袋の中身が班によって違うのである。このことは最初参加者には知らされない。各班が中身を確認し、早速ポスター製作にかかった。15分後ポスターが出来上がり、それぞれ発表し、どれが一番良かったかを投票で決定する。もちろん単にポスターの出来映えを競うわけではない。その過程、実際に作業して各人が感じたことにこそ意味がある。

*紙袋の中身が違うことに気付いたタイミング、その順番
紙袋の中身は班によって全く違っていた。しかも、「優劣」あるいは「貧富」とも言える差があった。一方ではカラフルなテープやペン、写真がたくさん掲載されたファッション雑誌などいくらでもアイデアが沸いてきそうなものであり、もう一方ではティッシュと黒鉛筆程度のものしか入っていない班もあった。同じように作業に入ったのだが、興味深いことに紙袋の中身が違うことにいち早く気付いたのは後者で、逆に前者の材料が豊富にあった班は作業に集中してしまいなかなか気付くことはなかった。
これは、満たされている者は自身の環境が他に比べて恵まれていることに気付かない一方で、持たざるものはすぐに満たされているものと比較するという特性が表れている。

【持たざる班】*投票で最も点数を集めたのは「持たざる班」
発表後の投票で最も点数を集めたのは持たざる側の班が製作したポスターだった。確かに材料がない中で必死に「パワー」を伝えようとした奮闘の跡がしっかりと残っていた。それに対して、満たされていたチームはきれいでコンセプトもはっきりしているもののいささかまとまり過ぎた感はあった。

投票の結果自体は参加者の個々の考え方や感じ方にも左右されるため偶然という側面もあると思われるが、この活動を通して人間の特性を知るという意味においては十二分に興味深い内容であった。

条件が違っていることを参加者に知らせずに同じ課題に取り組む過程で、最も示唆されたことは、「持てるものは、持たざるものの存在に気付かない」「持たざるものは、自らの環境の不満足を意識しやすい」ということであった。本研修においては他者を理解し受容することの大切さが一貫して語られたわけであるが、この「芸術活動」を通してわかったことは、それらがまず自分自身やその周りの環境を客観的に把握することが前提になるということではないだろうか。

【まとめ】
「チェックイン」、「ウォーミングアップ」とプログラムが進み、取り組んだ活動やディスカッションを通して感じたことが、講師である鈴木有香氏の的確な解説や助言、コメントによってしっかりと参加者の腑に落ちていく様子がよく感じられた。
参加者がそれぞれの園で抱える課題や問題の解決は一通りの方法でなされるものではないだろう。しかしながら、それらをコミュニケーション良く円滑に進め、より良い方向に導いていくためには、相手を知りなにより自分を知ることが肝要であるという鈴木氏のメッセージはしっかりと伝わったのではないだろうか。単純なハウツーではなく人間理解を深めるとでもいうべき根本的な学びは、保育の現場にとどまらない生活のあらゆる場面で生かすことができると思われる。
研修が進むうちに参加者の互いを信頼し受け入れようとする気持ちがより強まったせいか、兎にも角にも和やかな雰囲気が印象的な研修会であった。

(報告者:IT委員会 脇淵竜舟)

開催日程
平成26年11月19日~21日
開催場所
北海道・札幌市

012014年11月19日~21日。北海道札幌市において保育実践セミナーが開催されました。今回は、「研修での学びを園に持ち帰り共有するためにはどうしたら良いか」を実際の体験を通して学ぶワークショップが中心です。初日には、まずこの研修の場が参加者の皆さんにとって「安全・安心できる学びの場であること」を実感するために、アイスブレイクやペアインタビューなどを体験しつつ、もう一つの研修の柱、「子どものみかた」について考察を深めていきました。最初は緊張感が漂っていた会場もワークを通してすぐに笑い声があふれリラックスして3日間の研修が進められる雰囲気に包まれました。

022日目は、佐伯胖名誉教授(青山学院大学)から、『赤ちゃんを「人間としてみる」ということ』のご講演をいただきました。「学校知につながる能力(できてます的)を見るのが学者や研究者だが、私たちは、 “人間力”を見ることこそが大切だと子どもたちから教えてもらっている」という逆視点からのご示唆に真理を得た心境でした。

この講演を受け、長年にわたり保育園で子どもの育ちに伴走してきた佐々木美緒子園長(青戸福祉保育園)と佐伯先生の「現場の実践と理論をつなぐ」白熱した対談が行われ、参加者は理解がより深まったように思います。

03そして午後からは、津村俊充教授(南山大学)と鈴木健史学科主任(篠原保育医療情報専門学校)をファシリテーターに迎え、2つの分科会に分かれてファシリテーションの理論と実践を学びました。

最終日は、この3日間の研修のファシリテーターを務めていただいた鈴木先生とワールドカフェのワークショップを実践しながら研修の振り返りやこの研修を現場に持ち帰るための具体的な作業を行いました。
鈴木先生からは、「まずは初めの一歩を踏み出してください」とエールをいただき、3日間にわたる研修が無事に終了しました。

開催日程
平成26年9月17日~19日
開催場所
山梨県・清里

9月17日から19日にかけて山梨県清里で2泊3日の園長研修が行われました(参加者34名)。制度が変わっていく中、これから進む道を探っていくためにも基本に立ち返った研修を行おうということで企画されたものです。

1日目は保育園開拓期から成熟期までの40年間の保育実践を切り拓いてこられた新澤誠治氏による講演「先輩の歩み」、そして全国の保育園が抱えている「これからどう進むべきか」の課題を公定価格の仕組みを通して考えるきっかけになった長田朋久氏による講演。

2日目は職場の人間関係や学びの質をよりよくしていくための佐藤扶由夫氏・松原美里氏による「チームコーチング」のワークを交えた体験学習。

3日目は3時間に亘り語られた、渡辺久子氏の「子どもの最善の利益と日本の子どもを取り巻く現状」の講演でした。乳児が本来持っている(相手の声や表情から情動・意図を察知する力)をうまく発揮できない現在の子育て環境や母子関係、そのあり様に大きな危機感を抱き『保育所は子ども達の育ちの砦なのです』と私達へのメッセージを手渡された渡辺氏でした。

3日間を通して「子どもたちの最善の利益」を守るために、保育園が果たさなければならない役割を、あらためて学ぶことができた研修でした。

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第39回保育総合研修会が、2014年1月29日から31日、ANAクラウンプラザホテル神戸にて開催されました。

初日の汐見稔幸先生のご講演を皮切りに、シンポジウム、分科会での講義やワークショップ、そして最終日の西條剛央先生による、「よい保育とはどのように考えていけばよいのか?」のご講演を通して各人が「今大切にしたい保育とは何か」という問いに向き合い、考えを深める機会になったのではないでしょうか。

700名を超える参加者となった今回の研修会は、「子どもたちの未来のために今こそ“保育のグランドデザイン”を描く時期である」ということを再確認した研修会となりました。