公益社団法人 全国私立保育園連盟

生きもの植物との付き合い方

その11バイオミミクリー・2

1カタツムリ

 ♪でんでんむしむし かたつむり♪でおなじみのカタツムリ。梅雨の頃、アジサイとセットの絵が壁面などに飾られています。でも本当は、カタツムリはアジサイには近づきません。ただ季節が似合うだけです。アジサイには昆虫が寄りつかない秘密がありますが、それはまたの機会に伝えます。さて、カタツムリの殻の表面は汚れることはありません。特別な分泌液を出しているわけでもなく、不思議です。電子顕微鏡で見ると、細かい凸凹が無数にあり、接着面積を少なくすることによって、殻に付いた汚れや油分などもコロコロと転がり落とすようになっています。この構造を応用して、汚れが付きにくい建物の外壁や塗装なども開発されています。

2カワセミ

 最近は都会の川でも見かけるカワセミは、水面に飛び込む時に水の抵抗を少なくして魚を捕まえます。高速で走る新幹線の先頭車両は、このカワセミの嘴を模倣しています。空気抵抗が大きいと速度が落ちるばかりか、燃料消費の問題も出てきますが、一番の問題は高速の列車がトンネルを通過する時の騒音問題(ポンッという大きな音)です。この嘴を模倣することで空気抵抗が少なくなり、通過音の軽減につながっています。

3フクロウ

 夜に活動するフクロウの羽は、大きな羽音がすると獲物が逃げてしまうので、翼の後方に整列している風切羽に小さな羽が付いていて、羽音がしない構造になっています。この構造を列車のパンタグラフに付けることで、高速で走る際の遮音効果が得られています。新幹線に乗る時、パンタグラフを見ると、ギザギザが付いてたり、穴が開いてたりしていますよ。

4ムカデ

 ムカデを見ると、追いかけて踏み潰している人がいます。確かに噛まれると痛いですが、追いかけてまで殺す必要はないと思います。ムカデは漢字で百足と書きますが、100も足はないけれど転ぶことがありません。この構造から、災害地や宇宙などでの未知で複雑な環境を自由に移動できるムカデ型ロボットの開発が進展しています。

5アサギマダラ

 渡りをすることで有名なチョウです。園庭にフジバカマを植えると秋に訪れてくれます。渡りをする日はいつも天気がよいとは限らず、雨が降ることもあります。大雨が降ると木陰などでやりすごすこともありますが、突然の雨では飛ばなくてはなりません。この事態に備えて、チョウの羽には特別な撥水作用が付いています。ハスの葉にも水をはじく作用がありますが、チョウの羽のような薄い素材から新たな撥水成分が見つかれば応用できると考えられています。

6カブトガニ

 2億年前から生きている“生きた化石” といわれているカブトガニの血液の成分は、毒素と反応して凝固させたり、死滅させたりする作用があることがわかっています。そこで、HIV や癌などを抑制できるのではないかと、研究が進められています。

 前号から2回にわたって、少し気持ち悪い、嫌われる身近な生きものを紹介しました。好む好まないにかかわらず、今地球上にいる生きものは遺伝子的にも未知の薬の成分などが含まれているともいわれています。地球が誕生して 45 億年、この歴史の中で生まれた生物は、コンピュターのように部品を集めればできるものは一つもないと、生命誌研究者の中村桂子氏は話します。氏は著書の中で、「略画的自然観、密画的自然観」について、哲学者の大森荘蔵氏の「略画」と「密画」を引用して「種から芽が出てくる姿や、サナギからチョウになることを『略画的』と呼び、バイオテクノロジーなどで生き物を見ることを『密画的』と表現できる」と書いています。そして氏は、今の時代はこの密画的が中心になり、略画的がないがしろにされることがあるが、略画的な体験をしておかないと本当の密画的なことにはつながらないと述べています。
 私は、乳幼児期はこの略画的自然観を育てる時期だと思います。フランス文学者の奥本大三郎氏は「本当の命を大事だと感じるには、たくさんの虫を殺して、花を摘んでおくことが一番大事」と書いています。たくさん殺す必要はないでしょうが、「生きものとのかかわりが大事」ということだと思います。
 他にも、たくさんの生きものから環境への配慮に関することが開発されています。子どもたちにそのこと自体を教える必要はないと考えますが、子どもの頃に身近な生きものに触れていないと、その不思議は感じられません。成長するにつれて、生きものから遠ざかり、したくもないことをしなくてはならなくなるからです(あくまでも私の考えです)。
 不思議からは「なぜ」が生まれ、「知恵」が生まれると思います。だからこそ、少し気持ち悪いと思われる生きものにも触れておく必要があるのかもしれないと私は思います。

小泉造園代表/京都女子大学非常勤講師 小泉昭男