公益社団法人 全国私立保育園連盟

あの日を忘れない 東日本大震災

今、福島県の保育は…その3◆福島県伊達市

東日本大震災・福島第一原発事故後1年11か月
今、福島県の保育は…その3
◆福島県伊達市・霊山三育保育園の現状◆

【保育通信No.694/2013年2月号】

 東日本大震災が起きてから二度目の新年を迎えました。しかし、未だに32万人を超える方々が避難生活を送られています。
 震災後は全国の保育関係者の皆様方から心あたたまるお言葉や物資、そして、救援金等を頂戴しまして、心より厚く御礼申し上げます。お陰様で元気と勇気が湧き、保育士とともに子どもたちの成長を支えて参ることができました。また、一人ではないということを実感し、人々の絆を深く感じました。
 本当にありがとうございました。
 地域の中では民家の放射能除染作業が始まり、美しく咲き誇っていた花々が消えてしまい、まるで粘土でつくられた「箱庭のような環境」に見えてしょうがありません。園舎を取り巻く環境は自然がいっぱいで四季折々に楽しむことができていた、あの時のことがとても懐かしく思う毎日です

 昨年は、「福島復興元年」…と称し、一人ひとりが前向きに歩み始めました。保育園の放射能線量は下がってきていますが、まだまだ平均値にはなっておらず、戸外活動は制限しています。入れ替えをしたブランコや鉄棒に向かって走り出していく子どもたちの姿に、涙がこぼれてきます。今まで遊べなかった反動のエネルギーがこみあがっているように見えました。
 砂場遊びや松ぼっくり造形、どんぐり拾い等、感性を育てる遊びができない悲しみは大きいものがあります。 昨年の春、3歳児の担任が子どもたちと一緒に「オタマジャクシを育てたいですね」と話しました。普段であれば何も考えず、近くの田んぼへ出かけてオタマジャクシを取ってきたものですが、線量のこと、水質のことを考え、「やめましょう」と保育を制限してしまい、とっても悲しいことでした。
 給食で使用する食材に関する放射能検査については、毎日書類を作成し、明日使う材料をお昼前までに地域の役所に届けて担当の方に測っていただき、結果を取りに行くことを昨年4月から実施しています。検査結果はすべて「検出せず」となりますが、現在もこのような検査を継続している状況に変わりありません。
 遊びもそうですが、いつまでこのような環境が続くのか、人のせいにしてはいけないと思いながらも、目に見えない「放射能」を考えずにはいられません。

 古典の言葉に、
 「1年計画ならば穀物を植えるのがいい。
  10年計画ならば樹木を植えるのがいい。
  終身計画ならば人を育てるのに及ぶものがない」
とあります。
 激動期を迎えた保育界、こういう時こそ保育の原点に立ち戻り、「子ども尊重」、「人間尊重」の保育を意識して、私たち保育者は取り組みます。
 また、東日本大震災でお亡くなりになった方々への慰霊、鎮魂の礼を忘れることなく、未曽有の災害のことを子どもたちに語り継いでいくこと、そして、子どもたちが「明るく、やさしく、あたたかく」成長していくように尽くすことに努力してゆきます。
 子どもたちの数も減ってきている中、追い打ちを与えるように今後の保育制度も変化し、保育園の運営についても心配は募りますが、今、考えていることは、「砂場を屋内にしたい」ということ。このことが実現できるように地域に働きかけ、貢献してゆきたいと思います。
 今年も、どうぞよろしくお願い申し上げます。

齋藤厚子/福島県伊達市・霊山三育保育園園長