活動報告

Report

2024.04.05

全私保連 青年会議 特別セミナー報告

■ はじめに
 2024年2月15日~16日、第17回青年会議特別セミナーが2020年以来となる東京・浅草ビューホテルで開催されました。
「激動の時代に突入した今、決断する準備はできているか。~変革の時は今~」というテーマの下、153名の先生方にご参加いただき、無事に終えることができました。今回は、その様子を少しご紹介します。


 会場の様子

■ 1日目(2月15日)
【開会式】

 冒頭、青年会議・伊藤会長の挨拶において、「今まで通りの受け身の運営ではいけない。 社会の動向を見据えながら、今から自分が何をするのか」というメッセージが伝えられました。
 「激動」「決断」「変革」などのインパクトあるワードを取り入れた本セミナーのテーマからも、その覚悟が計り知れます。本セミナーの参加者もその覚悟の必要性について十分理解し、では今からどのように動いていくのかということを本気で考えているからこそ、この会場に集まったのだと思います。    

【基調講演・記念対談】
保育業界の次代を多角的な目から切り拓く
 講師:澤田智洋氏(世界ゆるスポーツ協会代表理事)
    梶望氏(ソニー・ミュージックレーベル)

 コピーライターとしての視点をもつ澤田氏、宣伝プロデューサーとしての視点をもつ梶氏の話は、私たち保育関係者の今後の事業運営において数々の示唆を与えてくれました。
 障害をもつ人に限らず、生活するうえで何らかの苦手や困難は誰にでも存在します。その困難を乗り越えるために、本人に訓練やリハビリを求め続けるような考え方から、苦手があっても過ごしやすい社会の構造や環境にしていくことにより、多くの人が過ごしやすい社会になっていきます。
 未発達の子や苦手がある子に訓練を求めるのではなく、その子が過ごしやすいように環境設定し、自分の力で乗り越えられるくらいの支援を常に心がけるのが保育者の役割であることを再認識させられた瞬間でした。    
 後半は、保育園マーケティングについての話を聞くことができました。私たちは、ただ単に園にとって有益だと思える情報を流し続けるのではなく、何の情報を、どのタイミングでどのように見せていくのかということを意識しなければいけないということがわかりました。

 基調講演・記念対談(右・澤田氏、左・梶氏)

【パネルディスカッション】        
生き残るために、変革の時は今
〈パネリスト〉
菊地政隆氏(学校法人 菊地学園理事長)
新保雄希氏(泉の台幼稚舎園長)
伊藤悟氏(このはな保育園園長)
〈コーディネーター〉
菊地幹氏(社会福祉法人 東京児童協会事務局次長)

 それぞれ異なる背景をもつ組織のトップ3名によるパネルディスカッションは、成功例はもちろん、失敗例や悩みも含まれており、参加者にとってはパネリストがとても身近に感じられました。
 課題を解決するために、また今に至るまでにどのような歩みと工夫があったのかということが話の中心となりましたが、総じて言えることは、パネリストの皆さんがスタッフのことをとても大切にしたうえで園運営を行っているということでした。「ES(従業員満足度)なしに CS(顧客満足度)なし」という言葉があるように、利用者(園児・保護者)を喜ばせるためには、まずはスタッフが仕事にやりがいと満足を感じ、充実した生活を送る必要があります。その事実を忘れないように、採用や育成に向き合っていかなければならないことを感じさせられました。


 パネルディスカッション(右から新保氏、伊藤氏、菊地氏)

■ 2日目(2月16日)
【情勢報告】
講師:齊藤勝氏(全私保連常務理事)

 「幼児期までのこどもの育ちに係る基本的なビジョン」「こども・子育て支援加速化プラン」その達成に向けた政策スケジュールなど、国における「こども政策」の推進について、併せて保育三団体協議会の取り組みとして予算要望、保育制度に対する要望等も報告されました。さらに、少子化に拍車がかかり、過疎地域を中心とした定員割れ等が危惧される中、不適切な保育の是正、ひいては保育の質向上のために子育て家庭の負担軽減や職員配置基準、公定価格の見直しについての要望が挙げられました。
 「こども誰でも通園制度(仮称)」の施策からわかる、国の子育て・保育への対応の変化を感じつつも、今後具体的にどのような制度になり、各保育施設にどのような対応が求められていくのか、大きな関心となり続けるでしょう。

【講演】
マーケティング~VOCを力に~
講師:天田卓良氏(NPO法人HOCARI理事)

 技術変化により顧客の声が集めやすくなり、社会変化により顧客が顧客の声を参考にする社会になりました。その点を考慮すれば、顧客の声に耳を傾け、顧客のニーズを把握することは今後選ばれる保育園となるために必要な努力と言えるでしょう。しかし、時として出てきた声をそのまま反映させるだけでは顧客のニーズに応えられないことがあり、私たちは表面的に上がった声の裏にある利用者の本音について推し量る力も同時に必要とされることがわかりました。その本音に迫る方法として、①矛盾を聞き出すこと、②例外を聞き出すこと、③財布の大きさを測ることについて教えてもらいました。
  保育園を選ぶのは子どもではなく大人です。その意味では利用者のニーズを優先した結果、子どもの最善の利益が損なわれるようなことは避けたいものです。しかし逆を言えば、子どもにとって影響がない範囲であれば保護者のニーズに目を向けていくことが求められる時代であるとも言えるのではないでしょうか。

 講演中の天田氏

■ おわりに
 本セミナーは、人口減少や親の働き方の変化に対する国の政策・動向を知るとともに、私たち保育従事者がどのようなスタンスで施設運営に携わっていくのかということについて熟考する機会を与えてくれました。
 これまで同様「子どもにとって何が幸せか」 について継続した検討が必要になるとともに、その子を養育する保護者や園で働くスタッフにとっても、何が幸せなのかということを考える必要があると改めて考えさせられました。子どもだけでなく、保護者にもスタッフにも幸せになってもらえる園になった時、その園は地域にとってなくてはならない存在になっているのだろうと感じました。
 今回の特別セミナーもたくさんのご参加をいただき、ありがとうございました。今後も青年会議らしく、新たなテーマについて検討し続けていきたいと思います。

 
(友岡善信/全私保連青年会議広報部副部長)